#3 心、想い、意思…目にみえないものの価値を活かす「共同創造」

鎌倉在住でネイチャーセラピストとして活動する内藤記世さんのコラム。自然とともに生きることの豊かさを伝えてくれます。連載第3回のテーマは、プロゴルファー・松山英樹選手の活躍から紐解く、「共同創造」。より楽しい人生を送るヒントを探ります。

 

心の拠りどころから生み出される力

みなさん、こんにちは。これを書いている3日前、プロゴルファーの松山英樹選手がマスターズで優勝し、ここ数日我が家ではこの話題で持ちきりです。人を幸せにする希望に満ちたニュースは本当に気持ちがいいですね。

ゴルフは、技術はもちろんのこと、メンタルが結果に影響すると言われているスポーツなので、松山選手の優勝後インタビューでも「プレー中に笑顔が多く見られましたが、心のコントロールはどうされていましたか?」と記者に質問されている場面がありました。


▲初心者の私でもメンタルがプレーに影響するということは実感しています

実は、これまでは笑顔があまりなく、どちらかというと苛立ちをこらえる表情などが多い印象の選手だったので、解説者も「笑顔で話していますね」とポジティブな心の変化を実況していました。私も「あれ?こんなに可愛らしく笑うんだ!」と思ったほどです。

笑顔から垣間みえる心の変化も、優勝の要因のひとつだったのでは?と書かれている記事を読むと、新しく組んだ“チーム松山”が影響しているとのこと。

これまでコーチはつけていなかったが、フラットに言い合える同世代のコーチをつけたり、大学時代の後輩をキャディにしたりと、些細なことも相談できる仲間で挑んだことでひとりでなんとかしなければという気負いが減り、心強さに変わり笑顔が増えたのではないかと分析されていました。

私自身、ネイチャーセラピストとして自分の心が他者や外界に与える影響を日々感じています。セッション中に心を通い合わせていくことで生まれる、私・自然・お客さまが織りなす空気感も、共同創造のひとつだと思っているのですが、「チーム松山」の事情を知り、心の拠どころから生み出される力を再認識させてもらいました。

目にみえないものの価値が高まり、精神的な豊かさに重きが置かれる「風の時代」に入った今、フラットな関係性で仲間と共同創造していくことが、物事の実現スピードを速めたり、思いもしないものを生み出したり、より楽しい人生を送るキーポイントになってきていると実感しています。これからの時代の要となる共同創造とはなにか、いま私が感じていることをお話しできたらと思います。


フラットな関係を築くのは、自分の「やりたい」

ビジネス書などで見かけることがあると思いますが、共同創造とは、お互いが対等でコントロールの関係にない状態で、一体となってなにかを創造することを意味しています。トップダウンの組織では、一定のコントロールが発生しているので難しいですよね。チーム松山の例もそうですが、良いことも違うと思うこともお互いがフラットに言い合えることが前提になっています。そして、上下ではなく横の関係を成立させるには、個人それぞれが主体的でなければ成り立ちません。

GOKOTI YUIGAHAMAメンバー
▲それぞれが自分の目的 を持ち、フラットな関係を築けているGOKOTIメディアのメンバー


お恥ずかしいですが、私は会社員時代、与えられた仕事に自分から率先して取り組むことを主体的だと思っていたのですが 、フリーランスになって初めて、自分のやりたい・叶えたいことを実現する意思を 持つことを“主体的”というのだとわかりました。たくさんの人が一体となってなにかひとつのコトを創造していくときに、その創造の過程の中に誰かの意思だけでなく、自分自身のやりたいことがないと結局のところ主体的には動けません。

以前はプライベートでも仕事でも、私は気づかぬうちに自分のやりたいことより相手のやりたいことに合わせてしまうタイプだったので、本当の意味での共同創造はできていなかったのかもしれないと痛感しています。

主体的というのが横の関係性をつくるひとつの要素ですが、仲間とフラットに言い合える関係を築くには、もうひとつ重要な要素があります。それは、心をひらくことです。


心をひらき信頼する

フラットに言い合うには、やはり信頼が必要です。信頼があるから相手の言葉を真摯に受け止められますし、自分の意見も安心して言えます。自分が心をひらくことで、相手も心をひらき、心を通わせることで信頼が生まれます。



▲お花がぱぁっとひらくように、自分の心も軽やかにひらいていきたいものです


繊細ゆえ傷つきたくない防衛本能で、私もまだまだ心をすぐにひらけないこともあるのですが、でも、心を通い合わせることができたときの喜びが私の心の栄養になっていることを知っているので、自分のペースで世界に心をひらくことを続けていきたいなと思っています。

心をひらき信頼できる、そんな心の安心を感じられる関係性があると、人は本来の自分を伸び伸びと発揮できるし、本人が想定していなかった力を出すこともできると感じています。きっと松山選手もコーチやキャディを信頼していたからこそ、自分の力を存分に発揮できたのではないでしょうか。今まで、自分のやり方に確固たる自負があった松山選手にとってコーチの言葉を真摯に受け止めるには、信頼なくしてはできなかったことかもしれません。

そして、共同創造の一番の醍醐味は、やはり喜びを分かち合えることにあると思っています。

想いを寄せ合う 共同創造

みんなでなにかを創りあげたときの喜びは、ひとりでなにかをした喜びの何倍も嬉しかった経験がみなさんにもあると思いますが、この創りあげるという行為は、何か直接的に関与していなくても想いを寄せ合うことだけでも共同創造になっています。

これもマスターズの優勝がよい例になるのですが、松山選手が優勝したときに実況をしていた解説者をはじめ松山選手を応援していた日本国民の多くのおじさま達が涙を流していました。

「松山選手に優勝してほしい」という涙するほどの熱い想いは、おじさま達も“松山選手が優勝すること”を共同創造しているということの表れではないでしょうか 。想いを寄せることで一緒に目的に向かっているからこそ、おじさま達にとってもそれが叶ったときの喜びがエネルギーとして分かちあわれ、心が震え、涙したのだと思います。



▲普段はあまり泣かないようなおじさま達が、涙を流すってなんかいいですよね(イメージ)

私はこの光景を見て、想いで共同創造する素晴らしさと、共同創造が人の心を震わせる瞬間を見ることができ、無限の可能性をひとり噛みしめていました。

共同創造は、間接的に人が想いを寄せ合うことでも実現できる。そう考えると、悲しく胸が苦しくなるニュースが後を絶たない世界でも、「平和であってほしい」と願う人々の想いが、安らかな未来を創ることにつながっていくのではないかと…。


▲鎌倉の地から、安らかな未来を描きながら

そんなことを考えながら、世界が平和でありますように、と私も想いを寄せてこれを書いています。

 


内藤記世 Naito Kiyo
大阪生まれ。世界遺産「高野山」に近く山深い和歌山県と大阪府の県境で育つ。大学卒業後、就職で東京へ。リクルートコミュニケーションズで広告制作ディレクションに携わった後、ロンドン留学。帰国後は、DIESELの広報宣伝部を経てフリーランスとなる。現在は、鎌倉に暮らし、Nature evangelist (ネイチャーエバンジェリスト)、森林セラピーガイドとして活動中。@kiyorin_n
公式HP

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