#8 家事が苦手だからこそ、自分のための造作キッチン

こんにちは、ライターの二木薫です。このブログでは、夫婦ふたりで東京から鎌倉に引っ越し、「この町で理想の家を建てよう」と奮闘する記録を綴っていきます。「鎌倉が好き」「鎌倉に住んでみたい」という人に向けてというだけでなく、理想の暮らしや家づくりについても皆さんと一緒に考えていけたらな、と思っています。

さて、二木家が目指す家づくりの目標のひとつが、「日々の中で、比較的多くの時間を費やす家事・炊事を楽しめる」ことです。以前、家事ラク動線・間取りについてはお話しましたが、今回はキッチンとキッチン収納をテーマにお伝えしたいと思います。


意識を変えた、造作キッチンとの出会い


日々、進化し続けるシステムキッチン。ショールームを見に行くと、かゆいところに手が届くお役立ち機能が満載ですよね。

シンプルで、使いやすさ、手入れのしやすさは抜群のコストパフォーマンス。もし、今の建設会社さん以外で家を建てていたら、システムキッチン一択だったと思います。お願いした建設会社のエンケルヒュースさんは、ひとりの大工さんがコツコツと家をつくりあげていくスタイル。基本的に、キッチンも造作です。

とにかく面倒くさがりな私は、家づくりのスタート時には、「造作はお値段もはりそうだし、ただ設置するだけで済むシステムキッチンでいいかも......」と、躊躇していました。

ところが、エンケルヒュースさんのつくるキッチンを拝見してみたら、一気に心境の変化が! 何ともおしゃれな外見、見たことのないようなデザイン。1台の大きなアイランドをぐるりと回遊して使える仕様になっており、シンクとIHが別々の方向でついています。



▲造作キッチンの施工例。なんとも面白い、四角いアイランドキッチンに驚く(エンケルヒュースHPより)


いつの間にか、「キッチンなんて大体こんなものよね」と、空間の自由度に自ら制限をかけていたのかもしれません。使いやすいだけでなく、ワクワクできるような場所にすれば、炊事にポジティブに向き合えそう! キッチン計画に対して遊び心がめばえた瞬間でした。さらに、検討していたシステムキッチンと造作キッチンで、金額の差があまり無かったことにも後押しされました。


キッチンを楽しい居場所に

多数の家事の中でも、何かしら得意・不得意や、好き・嫌いってありますよね。私の場合、日々のメニューを考え、効率よく調理し、片付けることは不得意分野の作業。特に、自分ひとりのために食事をつくる場合は、億劫に感じてしまうことも。また、コロナ禍でリモートワークが続く中、ひたすら炊事をし続けることに疲れてしまったこともあります。

そこで、まずは「モチベーションが上がるキッチンを計画しよう!」と思い立ちました。

キッチンの場所は、家の中でいちばん景色が良く見えるポジションにしました。目の前には豊かな緑と、眺めていて飽きないような大空。そして、照明デザイナーの友人に、ムードの出るダウンライトを選んでもらいました。


▲できあがったキッチンに立ってみたら、想像以上にすてきな景色。夜は小さなダウンライトの灯りで、グッと大人っぽく


せっかくの景色なので、手元も隠さずオープンのアイランドキッチンに。その代わり、背面一面に、リビング収納も兼ねた造作のロングカウンターを設置しました。


▲換気扇のダクト管は、階段からあがってくる時や、吹き抜けごしに見えないようにきれいに隠されています。設計士さんとインテリアデザイナーさんの苦心の集大成

以前は、料理道具やインテリアがセンスよく並べられたキッチンをインスタグラムなどで拝見して、憧れたものでした。でも、片付けが苦手で、ディスプレイにも自信がありません。というわけで「できぬなら、隠してしまえホトトギス」。キッチンはオープンでも、収納場所を確保して、できるだけものを隠してしまう戦法です!
 
そして、冷蔵庫をはじめとした家電やゴミ箱など、生活感が出そうなものも全て、キッチン横のパントリースペースに入れています。おかげで、今は下記のメリットを享受しています。

・ワンオペの炊事も、お酒を飲んだり、景色を見ながら楽しく過ごせる
・カウンターや調理台にものが並んでいないと、サッと掃除できる
・効率よく料理できなくても、調理中に、材料や道具やレシピを広げるスペースがある
・ものの居場所が明確になって片付けやすく、ストック具合が一目瞭然



▲冷蔵庫をはじめ、家電が並ぶパントリー。鎌倉は東京に比べて分別が細かいため、多数の分別用ゴミ箱も見えない場所に設置できて大助かり


ここがすごいよ! インテリアデザイナーさんのアイデア力

この成功体験は、一緒に計画してくれたインテリアデザイナーさんのおかげと言っても過言ではありません。「ものを隠してすっきり」という要望に全力で答えてくれました。大容量の収納を用意し、どこに何をしまうかを事前に計画し、引き出しや棚の寸法も調整されています。前の家を視察して、生活スタイル、手持ちのうつわや調理道具の量などを把握し、こんな詳細な図面を描いてくれました。


▲用途によって大きさや仕様が違う収納。アイテムのアドレスも事前計画したため、引越し後の片付けも楽ちんでした!


特に驚いたのが、小皿やお椀を引き出しにしまうアイデア。たしかに、何枚も積み重ねて食器棚に入れるより、探しやすく取り出しやすくなりました。


▲食器棚の奥に積み上げていて、使う頻度も少なくなっていたうつわたち。新しい家ではスタメンに返り咲きました


図らずも、家の特等席に鎮座する、立派なキッチンが完成しました。炊事が得意ではないからこそ、もののアドレスを明確にした、造作の広いキッチンをつくって大正解でした。パントリー、キッチン、ダイニングを回遊できる動線も動きやすく、複数人でも調理しやすい点も気に入っています。

最近では、いつの間にか、家族がキッチンに集まるようになってきました(なぜか犬も)。孤独や疲れを感じてしまうこともあった場所が、あたたかな、お気に入りの場所に変わりつつあります。
(つづく)



▲以前より、キッチンに立つ機会が多くなった夫さん。久しぶりにコーヒーを淹れてもらいました

 

◆二木 薫さん海街で家づくり

これまでの連載はこちら▶海街で家づくり

二木薫 Niki Kaori
東京にてエンタメ企業・メディア系企業に従事した後、2014年鎌倉へ移住。丁寧な暮らしに憧れつつ、片手にはたいてい甘いものかお酒。基本ぐうたらしていたい四十路フリーランスライター。工藝、フード、IT、地方創生...ジャンルに関わらず、なにかを“つくる人”の取材をしています。Instagram:@kaorilittle

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