#7  変化が楽しみな、焼杉(やきすぎ)の黒い家

こんにちは、ライターの二木薫です。このブログでは、夫婦ふたりで東京から鎌倉に引っ越し、「この町で理想の家を建てよう」と奮闘する記録を綴っていきます。「鎌倉が好き」「鎌倉に住んでみたい」という人に向けてというだけでなく、理想の暮らしや家づくりについても皆さんと一緒に考えていけたらな、と思っています。

さて、ウッドショックの影響で到着が遅れていた焼杉の外壁工事。あとがないギリギリのスケジュールながら、無事に終了しました! 

第7回は、ちょっぴり失敗した部分も含めて、我が家の「外観」のこだわりポイントについてシェアしたいと思います。

 

人気急上昇、焼杉の家とは?

家づくりでは、外観をどうするのかも重要なポイントになりますよね。「鎌倉の自然に溶け込む外観の家をつくりたい」と考えていた二木家は、家づくりのスタートからサイディングやガルバリウムではなく、木の外壁を希望していました。

お願いした建設会社のエンケルヒュースさんは、国産の木材をメインに「焼杉の家」を多く建てています。焼杉とは、名前の通り杉板の表面を焼き焦がして炭化させたもの。焼くことによって腐食のリスクを減らし耐久性を高める、日本の伝統技法です。ほぼメンテナンスフリーだという点からも、近年注目を浴びているのだそう。



▲焼杉は、西日本や瀬戸内の漁村などで使用されてきたタフな外壁で、塩害に強いところも鎌倉にぴったり


メンテナンスフリーといっても、もちろん何も変化がないというわけではありません。時が経つうちに杉の炭化層が風化して剥がれ、グレーがかった色に変わっていきます(気になる場合のみ再塗装したり、1枚ずつ貼り替えられるそう)。そういった「木の経年変化」を楽しめるのであれば、ぜひおすすめしたい外壁です。

焼杉は触ると炭がついて黒くなるのでは、という懸念をよく聞きますが、我が家の外壁『風神うずしおブラック』の場合、かなり強くこすらなければ炭はつきませんでした。


▲我が家の外壁は、那賀川木材さんの焼杉。ブラッシング加工して木材保護塗料を塗った『風神うずしおブラック』(右)を使っています。その他、焼いたままの風合いを活かし、クリア塗装した『素焼塗装』(左)も

 

性能だけでなく、意匠性の高さもおすすめしたい点です。杉を焼いて生み出される黒は、独特の深みのある色合い。日の光や月の光のもとで、より複雑な表情を見せてくれるのです。今後どのような変化をたどっていくのかも、楽しみにしています。

ただ、「黒い家はシャープすぎないか、圧迫感はないのか」と、最初は少し躊躇したのも事実です。北側に接しているお宅からは、「庭から見える景色が暗くなりそう。できれば違う色にしてくれないか」と相談もされました。
上棟後ではありましたが、建設会社に相談し、家の北面のみナチュラルな色味の杉板貼りに変更しました。いざ外壁工事が終わり、北側のお宅から我が家を眺めてみたのですが、相談された通り明るい色に変更して大正解でした。

外観は面積が大きいゆえに、まちなみに与えるインパクトも大です。機能性とデザインに加えて、周囲への影響も含めて外壁の素材・色を選ぶことで、住むまちに寄り添う家づくりに近づけたような気がします。

 

軒や窓のラインを揃えて、外観すっきり

外壁の素材が決まったら、次は窓について打ち合わせをしました。我が家は、南側の借景に向かって足元からの大きな窓が5枚並びます。圧倒的なガラス面を有する南側は、まさに家の顔。


▲左右に開ける『引き違い窓』にすると枠が目立つとのことで、2階は『すべり出し窓』と『フィックス窓』に統一しました

窓の位置や幅に関しては、設計士さんが念入りに揃えてくれました。掃き出し窓も、土間とフローリングでは床のレベルが違うので、足もとの高さを調整。造作収納のサイズに合わせた窓など、ひとつひとつ、間取りと外観のバランスを計算して窓を設置していきました。

その上で、屋根を南北に勾配させて、軒と窓のラインが平行になるようにデザインしたそうです。家の外観がすっきりとシンプルにまとまった秘密は、まさにこの工夫があったからこそ!

そして、窓の数もポイントだそうです。採光や風通しを考えると、つい、あちこちにつけたくなったのですが、「メリハリが大事なんですよ」と設計士さんが教えてくれました。南側に窓を集中し、東側や北側は控えめにしたところ、黒い焼杉外壁が映える理想の外観をかなえることができました。


▲家の南側に大きな窓を集めて、ラインを揃えた配置に。他の壁の窓は、できるだけ少なく

 

気をつけたい、エアコン室外機という存在

さて、うんうんと頭を悩まし、こだわって計画したお家。暮らしやすいように間取りもバッチリ、屋根の形や外壁の焼杉もお気に入りです。ところが、思わぬ落とし穴が......。
我が家を含め、よく聞くのが「エアコンの位置、もっと考えれば良かった!」という声。室内での位置については検討したのですが、室外機の存在を甘く見ていました。

特に、黒い外壁には白っぽい室外機はとても目立ちます。できれば、目線に入らない西側か北側にエアコン室外機を設置したかったのですが、2台を通りに面した南側に設置するしかない状況になっていました。


▲通りから見えるウッドデッキ上に、どどんと2台のエアコン室外機。「家の顔」でもある部分、もう少しどうにかしたい......


設計士さんの機転で、画像の室外機の向きを90度回転して袖壁に寄せ、少しでも目立たないように再設置していただきました。これから家を建てる人は、エアコン室外機や給湯器などのあまり見せたくない室外の装置の位置も、ぜひ事前に意識してみてくださいね。

初めての家づくりは、何事も完璧というわけにはいかないようです。なにげない選択が、最終的に家に及ぼす影響について想像するのは難しいですよね。いざ家が完成した後、「こんなはずではなかったのに...」と後悔しないためにも、家の中だけでなく外側も確認しながら計画してみてくださいね。

さて、次回はインテリアコーディネーターさんが全力で取り組んでくれた、造作キッチンのお話をしたいと思います。果たして、ぐうたらな私ならではのスペシャルキッチンとは......?
(つづく)

◆二木 薫さん海街で家づくり

これまでの連載はこちら▶海街で家づくり

二木薫 Niki Kaori
東京にてエンタメ企業・メディア系企業に従事した後、2014年鎌倉へ移住。丁寧な暮らしに憧れつつ、片手にはたいてい甘いものかお酒。基本ぐうたらしていたい四十路フリーランスライター。工藝、フード、IT、地方創生...ジャンルに関わらず、なにかを“つくる人”の取材をしています。Instagram:@kaorilittle

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