GOKOTI アイテムストーリー #5 | まろやかな色・造形を楽しむガラスの装身具 by erika tezuka glass works

GOKOTI アイテムストーリー  #5  | まろやかな色・造形を楽しむガラスの装身具 by erika tezuka glass works

GOKOTIで取り扱っている表情豊かなアイテムたち、それぞれのモノづくりの背景にある物語をご紹介するコーナーです。日常の彩りに、ギフト選びのお供に、素敵な出会いがありますように。

今回は、GOKOTIオーナーが作品にひと目ぼれしてお取り扱いがはじまった、『erika tezuka glass works(エリカテヅカグラスワークス)』さんのご紹介です。

目にするひとの心を明るく照らすような、手塚えりかさんが作るガラスの装身具たち。ガラスの硬いイメージをくつがえすまろやかさの背景にあるもの、陰での体力勝負や制作の合間の密かな楽しみ......。知られざるストーリーも、ぜひお楽しみください。(聴き手:ライター 二木薫)

生活の道具という枠をこえて、感受性にふれる作品を作りたい


ーーGOKOTIと手塚さんとのご縁はどのようにして始まったのですか?

7年前に、GOKOTIさんからお問い合わせいただいたのが始まりです。ガラスのヘアゴムを気に入っていただいたとのことで、とても嬉しかったのを覚えています。


ーーGOKOTIオーナが手塚さんのヘアゴムを初めて見た時、髪をさっとまとめて由比ヶ浜を歩いたらさぞすてきだろう、と目に浮かんだそうですよ。

「生活の道具」という枠を超えて、誰かの感受性に触れられるような、そんな作品を作りたいと思っているんです。
アクセサリーを身につけたり、器に料理を盛ったり、花を飾ったり、私の作品を生活の中で使ってくださる方々が「なんだかよい気分」になっていただけたなら嬉しいですね。


▲ガラスの透明感とまろやかな形が印象的なヘアゴム。髪を結ばず手首につけている時もブレスレットのように楽しめるので、ギフトとしても大人気



ーー感受性と言えば、制作のインスピレーションのもとはありますか?

インスピレーションのもとは景色です。美しい景色を見ると、心が洗われるような気持ちになります。そういう瞬間が、いちばんインスピレーションを刺激するように思います。

ほぼ毎日、工房まで片道30分かけて歩いているのですが、その間にも空や川、緑や花などが、季節ごとの光に照らされて本当に綺麗。最近は、真夏の空の青さと白い雲のコントラストや、たわわに実った茄子やトマト、夕方の空のグラデーションなど、毎日見ても飽きない眼福にあふれています。


▲窯出しされたガラスには、季節ごとの自然の景色からインスピレーションを受けた色彩が写しだされる

 

原動力は、ひたむきな情熱とおいしいお菓子

ーー工房までの道のりで受けとる色彩や光が、作品に反映されているのですね。もともと、ガラス造形家を目指されていたのですか?

母校である女子美術大学付属高校から同大学への進学の際、ガラスコースのある工芸科を選びました。その頃は、恥ずかしながら将来のプランなど皆無で、「ただ綺麗だから。楽しそうだから」という理由でガラスを選びました。

進路を決めるくらいになると「作家としてガラス制作を続けたい」と強く想うようになり、卒業後すぐに実家のひと部屋を間借りして、そこから活動を始めました。今思うと、考えの浅いまま、気持ちだけで突っ走ってきたと思います。

ガラス造形家さんのアシスタントやアルバイトを掛け持ちしながら、少しずつ個人でのガラスの仕事を増やしていきました。


▲作り手の手塚えりかさん、ご自身の装身具とともに。直感に導かれてガラス造形の世界へ

制作には主にパート・ド・ヴェール、またはキルンキャストと呼ばれる、ガラスの鋳造技法を使います。粘土で作った原型から石膏で鋳型を作り、ガラスの粒や粉を詰めて鋳造するというやり方です。また、アクセサリーには、ガラスを高温で溶着するフュージング技法を併せて使うことも多いですね。


▲にじむ水彩画のようなピアス。独特の質感や色は、細かな気泡が発生する粉ガラスを使うからこそ出せる、パート・ド・ヴェールの特徴

 ーーガラス素材の好きなところ、大変なところはどんな部分でしょうか?

何の知識もないまま直感と感性だけで選んだので、思った以上に体力のいる作業で苦労もありました。出来あがってくるガラスがどんなにきれいでも、作業はきれいでもスマートでもない。防塵マスクに防塵メガネで、石膏やガラスの粉まみれになり、爪もボロボロになります......。色々と工夫もしてだいぶ軽減されたとは思いますが、それでも大変なことはまだたくさんありますね。

しかし、その大変さや苦労を含めて、ガラスがただただ大好きです。ガラスを扱っていると、それだけで透き通った流水のような特別な瞬間にたくさん出会うことができます。
決して平坦ではなかった道のりだったにも関わらず、飽きっぽい私が約18年続けてこられた。それだけ相性が良いのだと思います。


ーー体力勝負のお仕事ですが、制作の合間のお楽しみはありますか?

おいしいお菓子を食べることが何よりの息抜き。お気に入りは、『La petite maison blanche』さんのパウンドケーキです。毎月お取り寄せしています。


▲お気に入りのパウンドケーキでほっとひと息。手塚さんのinstagramには、作品とともにおいしそうなおやつも登場


ガラスの個性を活かし、丸みとやわらかさを引き出す

ーー制作の際に大事にしていることやこだわりは何でしょうか?

「自分が使いたいもの、欲しいもの」がまず前提。そして、一点ものとしてひとつひとつの個性を大事にしながら作っています。

現在GOKOTIさんでお取り扱いいただいているヘアゴムやイヤリングについては、ガラスの自然な粒感をクリアガラスの部分にそのまま残しているので、それぞれ違った個性で仕上がっていると思います。

使い心地や色などについてはひと手間加えて、私の作品ならではの部分が作れるように意識しています。


ーー手塚さんの作品ならでは、と言うと......?

自分ではよくわからないですが、丸みややわらかさがあるとよく言われます。きっと、尖ったものやチクチクするものが嫌いだからでしょうか......。

感触や肌触りのよいものが好きで、思わずナデナデしてしまう癖が、ガラスの磨きの過程に影響しているのかもしれません。


▲ていねいに繰り返し磨かれた角のない造形は、コロコロとした水滴のよう。硬質でクールなガラスのイメージをくつがえすピアスたち

 

ーーたしかに、思わずナデナデしたくなる作品ばかり! 形や色の丸み・やわらかさが手塚さんならではなのですね。最後に、今後の抱負や夢があれば教えてください。

最近、工房で教室やワークショップをしてみたいと思い始めたんです。ずっと自分の作品を作る事に熱中していて、教えることにはあまり興味も自信も持てずにいたのですが、18年続けてきたことで自分にも少しは教えられることもあるのかな、と気持ちの変化がありました。

現在の工房は狭いのでまだまだ先の夢になりそうですが、いつか出来たらいいなと思います。

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erika tezuka glass works
手塚えりか

instagram @et_glass_works


ー略歴ー

2006年 「女子美術大学卒業制作展」 卒業制作賞受賞
「koganezaki・器のかたち・現代ガラス展」入選
2008年 「若い力/創造する暮らし展」入選
2015年  グループ展「みんなの市」 伊勢丹浦和(〜2021年)
2017年  「工芸都市高岡2017クラフト展」入選
「第57回日本クラフト展 -クラフト NEXT-」入選
2018年  「クラフトフェアまつもと」長野
「工房からの風」千葉
2019年  3人展「陰影のガラス展」新宿髙島屋(〜2021年)
2021年  2人展「草木萌え動る」ヒナタノオト


ー今後の予定ー

2022年
4月 みんなの市 越谷レイクタウン
5月 グループ展 自由ヶ丘
7月 グループ展 清澄白河
8月 2人展 景徳鎮
9月 個展 草加


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取材・文 

二木薫 Niki Kaori
東京にてエンタメ企業・メディア系企業に従事した後、2014年鎌倉へ移住。丁寧な暮らしに憧れつつ、片手にはたいてい甘いものかお酒。基本ぐうたらしていたい四十路フリーランスライター。工藝、フード、IT、地方創生...ジャンルに関わらず、なにかを“つくる人”の取材をしています。Instagram:@kaorilittle

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